全ての働く女性に送りたい。キャリアアップより大切な“キャリアデザイン”という考え方

女性のキャリア

「キャリアアップ」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?
今まさに目指しているという人もいれば、できれば現状維持を続けたいという人もいるでしょう。いずれにせよ、迷いなく即答できる人は、意外と少ないのではないでしょうか。

キャリアアップを目指すこと自体は、前向きで良いことです。昇進やスキル向上の先には、給与の増加や裁量の拡大など、さまざまなメリットがあります。
ただし注意すべきなのは、その成否がしばしば「他人からの評価」に左右されるという点です。

(出典)私たちは無痛恋愛をしたい 6巻

例えばもし、キャリアアップを目指して走り続けた先に、思いもしない異動が待っていたら――あなたはどうしますか?働くこと自体にやりがいや幸せを感じられる人なら、役職や肩書きにあまりこだわらないかもしれません。けれど、もし心のどこかで「誰かに認められること」「肩書を得ること」に期待して努力していたとしたら、その落差から立ち直るには大きなエネルギーが必要になるかもしれません。

この記事では、こうした将来的な躓きを防ぐために必要な「キャリアデザイン」という考え方について解説していきます。


1. キャリアアップとキャリアデザインの違い

キャリアアップとは

キャリアアップは、現在の職業や職位から一段階上のステージへと進むことを指します。 具体的には、昇進や昇給、専門性の向上などが含まれます。これには、スキルや知識の向上に加えて、評価者や市場からその地位に相応しいと評価されることがセットで必要です。

  • 昇進や昇格
  • 年収アップ
  • 専門スキルの向上

キャリアデザインとは

一方、キャリアデザインとは、将来のなりたい自分やありたい姿を実現するために、職業人生を主体的に設計し、実行していくことです。ポジションを問わず自分がありたい状態を明確にし、そこに至るために必要な知識やスキル、経験を整理して、具体的な行動計画を立てる一連のプロセスを、キャリアデザインと呼びます。

  • 自分の価値観やライフスタイルを踏まえた働き方の設計
  • 仕事だけでなく家庭・趣味・学びとのバランスを考える
  • 長期的に「どんな生き方をしたいか」を起点にキャリアを描く

キャリアアップとキャリアデザインの決定的な違い

キャリアアップは「縦の成長」に限られているのに対し、キャリアデザインは「自分らしい方向性を決める横の広がり」とも言えます。

キャリアアップキャリアデザイン
ゴール定量的な目標達成定性的な目標達成や、物事の実現
得られる結果昇給・肩書・世間や会社の評価自己実現、自分の心の満足感
プロセス・仕事で成果を出すこと
・会社や顧客から評価されること
・評価の結果が客観的な指標や結果に反映されること
・目指したい姿を描くこと
・必要な力を身に付けること
・必要な環境を選ぶこと
・計画を立て自分のペースで進めること

この二つの概念は、共存させることが可能です。ただし、共存しやすいのは「まず自分のキャリアデザインを描き、その結果としてキャリアアップを実現する」というプロセスです。 逆に、会社の評価軸を主体にキャリアアップを追いかけながら、自分軸のキャリアデザインを実現するのは、難易度が高くなります。

キャリアアップだけをゴールにすると、思うように進まず挫折してしまうことも少なくありません。
おすすめなのは、まず自分なりのキャリアデザイン(将来像や働き方やあり方の設計)を描くことです。その設計に沿って努力を重ね、その結果としてキャリアアップがついてくる、という道筋のほうが長続きしやすく、納得感のある成長につながります。

2. 女性のキャリアデザインが難しい理由

キャリアデザインは男女を問わず重要な考え方ですが、女性の場合はライフイベントや社会的な制約といった考慮すべき要素が多く、選択肢が狭まりやすい傾向があります。

出産・育児と仕事の両立が難しい

日本では、第一子を出産した後に仕事を辞める女性が約3割にのぼり、仮に出産後も働き続けた場合でも、出産しなかった女性と比べて10年間で賃金が46%も少なくなるという調査結果があります(※1)
つまり「仕事と出産・育児の両立には大きなハードルがある」という現実が様々な調査から浮き彫りになっています。
(※1)“子育てペナルティ”出産後10年で女性は賃金46%減 時短で昇進できず、男女賃金格差縮まらず 東大研究

男女間の賃金差・評価差

日本のフルタイム労働者における男女の賃金格差は22%(OCEC加盟国平均約12%)と大きく、女性の管理職比率もわずか15.5%と非常に低い状況が続いています。

(出典)産経新聞 日本の女性役員比率、G7で大差の最下位 30%達成ハードル高く

日本では男女平等が進んだ現代でも、家事や育児の多くを女性が担う状況が続いており、女性のキャリアの停滞が免れません。結果として、女性管理職はいまだに「少数派」のまま。制度や評価の多くを男性が握っているのが現実です。

女性のキャリアには、確かに“見えない壁”――いわゆる「ガラスの天井」が存在しています。しかも、それは年齢を重ねるほど強く感じる人が増えていきます。

日本で働く女性が選択肢を持ち続けるには、こうした現実を知った上で、きたる将来に備えた、しなやかなキャリアデザインが不可欠なのです。

3. 女性のキャリアデザイン方法論

それでは、具体的なキャリアデザインの方法を見ていきましょう。

STEP1. 目指したい姿の解像度を上げる

「目指したい姿」は、特別なものではなく「自分らしさ」の延長線上にあります。 まだ見ぬ未来を想像するのは難しいですが、過去を振り返るとヒントが見つかります。まずは下記の質問に答えてみましょう。

  1. あなたがこれまでに「自分らしく働けた」と思う環境はどんな環境でしたか?
  2. あなたが「自分らしく働けていた」時に発揮できていた強みや、意識していなくてもよく周囲に褒められたことは何ですか?
  3. あなたは「自分らしく働ける」環境で「自分の強みや良さを発揮できる」としたら、どんなことを成し遂げたいですか。大きなことでも小さなことでもいいので挙げてみてください。

できるだけ解像度高く、思っていることを言葉にしてみましょう。 「どんな場所で」「どんな人と」「何をしているときに」自分は最も充実できるのか。それを整理することで、自分の可能性が最大化した状態が見えてきます。

大切なことは、「ロールモデルと同じ状態」ではなく「自分の可能性が最大化した状態」をゴールに設定すること。そうすることで、他人を羨む物語ではなく、自分が主人公の物語にフォーカスすることができるようになります。

STEP2. 必要なスキル・経験を言語化する

目指したい姿が見えてきたら、その理想の人物となる自分がもっていたい力やスキル・経験を書き出してみましょう。大事なポイントは、ポジティブに目指したいと思えるスキルや経験書くことです。

目標達成を助ける心理学の考え方に『接近目標』と『回避目標』という分類があり、接近目標の方成功率が高いことが研究で示されています。

『接近目標』・・・なりたい状態、ほしいものなどのポジティブな目標
『回避目標』・・・危機や不安を避けるための「~になりたくない」という目標

例えば英語を勉強する場合でも、目標の立て方によって成果は大きく変わります。 「ウォール街で働けるようになりたいから英語で仕事ができるようになりたい」とワクワクしながら取り組むのと、 「英語が話せなければグローバルな世界で通用しないからやらなければならない」と追い詰められた気持ちで取り組むのとでは、 前者の方がポジティブに頑張ることができ、成果も出やすいわけです。

スキルや経験そのものは「嫌なこと」に思えても、ポジティブなゴールを達成するために必要だと感じた瞬間、それは自分にとって「達成したい目標」へと変わり、苦手なことでも身に着けられる可能性が上昇するのです。

STEP3. 必要な環境・条件を明確にする

続いて、ステップ1で考えた「自分が高いパフォーマンスを発揮できる環境」、そしてステップ2で考えた「スキルや経験を身につけられる環境」を言語化していきましょう。

ここでは、給与・労働時間・勤務地といった数値的な条件だけでなく、下記のような要素まで具体的に落とし込み、その優先順位をつけていきます。

  • 業界
  • 仕事内容
  • 担う役割
  • 会社の社風
  • 社員の年齢層や性格

こうして洗い出した条件と優先順位こそが、そのまま「会社選びの軸」になります。条件が具体的であればあるほど、会社探しつまり、あなた自身の希望を言語化することが、最適な職場に出会う近道になるのです。

STEP4. 計画を立てる

どんなに「この会社で働きたい」「スキルを身につけたい」と思っても、計画を立てて実行しなければ、目標は実現しません

成功率が高い計画を描くコツは、目標を分解し、すぐに実行にうつせる行動まで落とし込み、スケジュール化することです。

例えば「海外で働きたい」という目標があれば、下記のように行動まで落とし込む必要があります。 「半年後に海外で働く」と考えるとどうしたら良いかわかりませんが、「必要な行動」に書かれている「海外留学後現地就職した人のブログやYoutubeを確認する」なら今週末にもできそうに思えませんか?

目標達成で挫折するのは、大きく分けて2つのパターンがあります。 1つは「一足飛びに達成しようとして挫折する」パターン。 もう1つは「立てた計画に縛られ、少しの遅延や変更も受け入れられず挫折する」パターンです。

目標は、すぐに到達できないからこそ“目標”であることを忘れず、長期的な視点を持ち、日々の小さな行動を積み重ね、淡々とチャンスを待ち続けることが大切です。そうしているうちに、ふと気づけば目標は目の前にきていたり、通過点になっているものだと思います。

STEP5. 実行する、習慣化する

計画を立てたら、あとは3日坊主にならないように日々習慣的に行動を実施していきます。 目標を紙に書き出したり、カレンダーやタスク管理アプリで習慣化することで、モチベーションを保ちながら継続していきます。 最も地味で飽きやすいこのアクションを継続できる人が少ないため、目標を達成できる人は限られるのです。自分が物事を継続できる時、飽きてしまう時など自分の癖をよく研究し、続けられる方法を探してみましょう。

ちなみに私はブログを書いていますが、毎日1章書くと決めて続けています。小さな積み重ねでも、確実に成果に繋がっていきますよ。

3. ーまとめー人生で大切なこと

この記事では「キャリアアップ」ではなく「キャリアデザイン」という視点をお伝えしてきました。
もちろん、キャリアアップを突き詰めて大成することも、一つの幸せの形です。

スティーブ・ジョブズが最期にこう語ったと伝えられています。

「私はビジネスの世界で成功し、富や名声を手に入れた。しかし死を前にして、それらは何の意味も持たない。ただ一番大切なのは、家族や愛する人との時間、そして心の中の喜びだ。」

キャリアの象徴のような人物でさえ、最後にビジネスでの成功よりも、心の中の喜びが全てだと感じたのだなと驚きました。

私たちはつい、周囲からの評価や目の前の成果を追いがちです。しかし最後に残るのは、他人の評価ではなく「自分が自分の人生をどう評価するか」。そこに尽きるのだと思います。

忙しさに翻弄される女性が多い現代において、より多くの女性に自分の価値観に沿ってキャリアをデザインし、納得できる人生を歩んでほしいと心から願います。
評価も肩書も「たまたま自分のやりたいこと」と「会社の物差し」が重なった結果として自然に得られるもの。そのくらいの距離感でいる方が、肩の力が抜けていいのだと思います。

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